宝町 杏里の会 旧第二内科同窓会

INTERVIEW

高血圧次世代治療戦略センター長
米谷充弘先生へのインタビュー

2026年4月に開設された「高血圧次世代治療戦略センター」について、センター長の米谷充弘先生にお話を伺いました。

私は2008年に金沢大学を卒業し、2010年に山岸正和教授が主催されていた金沢大学第二内科に入局いたしました。 その後、第二研究室で、武田仁勇先生の下、福井大学の宮森勇教授と連携しながら、内分泌・高血圧の診療と研究に携わり、現在は金沢大学附属病院 高血圧次世代治療戦略センターで診療・運営に携わっております。 本日は、センター設立の背景や、今後どのような診療体制を目指しているのかについて、お話しできればと思います。

第二内科に入局された経緯

私は2008年に金沢大学を卒業し、初期研修を経て、2010年に山岸正和教授が主催されていた第二内科に入局しました。 第二内科は、循環器、内分泌・代謝、腎臓、消化器など幅広い内科領域を包含しており、臓器ごとではなく全身を総合的に診る姿勢に魅力を感じました。 なかでも私にとって非常に印象的だったのは、『人を育て、ともに学ぶ』という医局の姿勢です。 単に知識や技術を教えるだけではなく、若手を育てながら、医局全体で学び続けるという考え方に強く感銘を受け、この医局で学びたいと思ったことが、入局の大きな理由でした。

内分泌・高血圧の分野を専門に選ばれた理由

高血圧は非常にありふれた病気ですが、その中には二次性高血圧のように、背景に明確な原因があり、適切に診断すれば治癒可能な高血圧が含まれている点に強く興味を持ちました。 単なる生活習慣病として一括りにするのではなく、その背景を丁寧に見ていくことで、患者さんの治療方針が大きく変わるところに、この分野の大きな魅力を感じました。 また、当時から高血圧領域では、新しい診断法や治療法に加えて、新規医療機器の開発にも取り組まれており、次世代の医療につながる可能性に大きな魅力を感じたことも、この分野を選んだ理由のひとつです。

高血圧次世代治療戦略センターが設置された背景

大きな契機のひとつは、腎デナベーションという新しい治療法が承認されたことです。 これまで高血圧治療は、生活習慣の改善と薬物療法が中心でしたが、それだけでは十分にコントロールできない患者さんも少なくありませんでした。 そうした中で、新たな治療選択肢が登場したことを契機に、治療抵抗性高血圧を中心として、より専門的かつ包括的に高血圧診療を行う体制が必要だと考え、センター設置につながりました。

センター設立の背景にあった臨床的な課題

高血圧は患者数が非常に多い一方で、薬を複数使っても血圧が十分下がらない方が一定数おられます。 そうした患者さんでは、単に薬を増やすだけではなく、生活習慣や服薬状況に加え、内分泌性高血圧、腎血管性高血圧、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな要因を整理して評価する必要があります。 しかし実際には、それらを一つの窓口で総合的に診る体制は、必ずしも十分ではありませんでした。 そのため、治療抵抗性高血圧を入り口として、多角的に評価・治療できる場が必要だったというのが、臨床的な背景です。

センターのコンセプト

一言で言えば、『治療抵抗性高血圧を入り口として、多診療科で連携して診るセンター』です。 私は内分泌を専門にしていますが、高血圧という病態は、それだけで完結するものではありません。関連領域を横断しながら診療していくことが、このセンターの大きな特徴です。

他の高血圧外来や専門外来と比べたときの特徴

特徴は、単に血圧を下げることだけを目的にしないところだと思っています。 つまり、なぜ血圧が下がらないのかを整理し、その背景にある病態や合併症まで含めて評価したうえで、患者さんごとの病態に応じた最適な治療を考える点です。 さらに、大学附属病院であることの大きな強みとして、各専門分野の専門医が集まっていることがあります。 循環器内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科といった内科系はもちろん、必要に応じて血管外科などの外科系診療科、放射線科、画像診断部門、カテーテル治療に関わる部門とも連携しながら診療を進めることができます。 こうした多領域の専門性を集約しながら、患者さんごとの病態に応じた評価と治療を行えることが、このセンターの大きな特徴だと考えています。

腎デナベーションへの期待

腎デナベーションは、治療抵抗性高血圧の患者さんにとって、新しい治療選択肢になり得ると考えています。 もちろん、すべての患者さんが対象になるわけではありませんし、適応をきちんと見極める必要があります。 ただ、これまで生活習慣や薬物治療だけでは十分な改善が得られなかった方に対して、新しい可能性を提示できる点は非常に大きいと思います。 センターとしては、腎デナベーションだけを前面に出すのではなく、その方に本当に必要な治療は何かを丁寧に見極めたうえで提案していきたいと考えています。

今後の加賀地域での取り組み

今後の大きな展開のひとつとして、加賀地域での取り組みを非常に重要に考えています。 加賀市はデジタル田園健康特区に指定されており、また金沢大学と加賀市は、医療版情報銀行に関する共同研究も進めています。さらに、加賀市医療センターは地域の急性期医療の中心を担う重要な病院です。 こうした基盤を生かしながら、加賀地域で高血圧診療の新しいモデルを構築していきたいと考えています。

私自身、大学側のアーキテクトとしてこの構想に関わっており、加賀市医療センターとも連携しながら、将来的にはマイナンバーなども活用したハイリスク患者さんのスクリーニングや、治療抵抗性高血圧の早期拾い上げにつながる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。今年度より、加賀市医療センターでは、これまで内分泌代謝内科の岡本先生らと協力しあいながら、医学系大学院 未来型健康増進医学グループからは 青野助教、門野特任准教授が非常勤医師として勤務している体制で、今年度からは院長に川尻剛照先生が就任されており、この構想の推進が期待されます。この加賀での取り組みが成功すれば、他の地域へ拡大していくことを考えています。

単に病院の中だけで完結するのではなく、地域全体で高血圧を早く見つけ、必要な患者さんを早期に専門診療へつなげる流れを作っていくことが、今後の大きな目標です。

センターへご紹介いただきたい患者さん

同窓会の先生方には、ぜひ治療抵抗性高血圧、あるいはその可能性がある患者さんを早めにご紹介いただきたいと思っています。

一般的には、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を使用しても目標血圧まで下がらない場合を、治療抵抗性高血圧と呼びます。 ただ、実際の臨床現場では、"すでに4剤以上の降圧薬が必要になっている患者さん"や、"3剤以上使用していてもなお血圧コントロールに難渋している患者さん"が、一つの大きな目安になると思います。

そうした患者さんの中には、原発性アルドステロン症などの内分泌性高血圧、腎血管性高血圧、睡眠時無呼吸症候群など、背景に治療可能な病態が隠れていることがあります。

特に、

  • 若年発症の高血圧
  • 低カリウム血症を伴う症例
  • 急速な腎機能悪化を伴う症例
  • 多剤併用でも血圧が不安定な症例

などについては、専門的に評価することで治療方針が大きく変わることがあります。

少し気になる、この段階で一度評価してほしい、という症例があれば、ぜひ早めにご相談・ご紹介いただければと思っています。

同窓会の先生方、とくに内科の先生方との連携について

高血圧診療のなかでも、多剤併用下でも血圧コントロール不良な症例や、二次性高血圧が疑われる症例については、より専門的な病態評価が必要になることがあります。 そのような症例を、地域や関連病院の先生方から適切なタイミングでご紹介いただき、こちらで病態を整理し、治療方針を検討したうえで、再び地域での継続診療につなげていく、そうした連携が非常に重要だと考えています。 大学病院として専門性を発揮しつつ、同窓会の先生方にとって相談しやすく、紹介しやすいハブのような存在になれればと思っています。

同窓会・諸先輩方へのメッセージ

最後になりますが、日頃よりご指導を賜っております同窓会の諸先生方、また諸先輩方に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。 私自身、2008年に金沢大学を卒業し、2010年に第二内科に入局して以来、多くの先生方に育てていただき、現在は高血圧次世代治療戦略センターの運営にも携わっております。 まだまだ学ぶことばかりですが、今後はこのセンターの活動を通じて、診療・教育・研究、そして地域連携の面から、少しでも金沢大学と医局に貢献していきたいと考えております。 引き続きご指導、ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。